田中裕明の百句(59)

 走馬燈子供のすこし変はりもの

 『先生から手紙』、平一〇、走馬灯=夏。
 吾が子の言動によその子とは違うところを見つけて、面白がっている。僅かながら不安感もあろう。独自性のつよい取合せで、そんな微妙な感覚を静かな光の明滅によって落ち着かせた。走馬燈は夏祭りで買ったものか。

# by tsukinami_819 | 2023-10-10 06:43 | 百字鑑賞 | Trackback | Comments(0)

田中裕明の百句(58)

 水着の子時計の螺子を巻いてをり

 『先生から手紙』、平一〇、水着=夏。
 夏休み、これからプールへ出かけるところか。水着に着替えた子どもが、掛け時計の針が停まっていることに気づいて、踏み台に乗って螺子を巻こうとしている。静かな、けれども生き生きとした、平穏な暮らしの点描。

# by tsukinami_819 | 2023-10-09 06:43 | 百字鑑賞 | Trackback | Comments(0)

田中裕明の百句(57)

 子の髪の乾きやすくて雛の間

 『先生から手紙』、平一〇、雛=春。
 宵の口、風呂上がりの女児たちが揃って髪を乾かしている。春が来てまだ暖房を使っているのかもしれない。ひな壇の前に集まって、賑やかに今日の出来事を語り合う、夢のような愉しい時間。下五の読みはヒイナノマ。

# by tsukinami_819 | 2023-10-08 06:43 | 百字鑑賞 | Trackback | Comments(0)

横山蜃樓顕彰俳句大会 作品募集

12月15〜17日の3日間「明石の俳人 横山蜃樓展」が、兵庫県明石市の文化博物館にて開催されます。
最終日の17日には、同館で 第1回横山蜃樓顕彰俳句大会 も行われます。その事前投句の締切日(10/25)が近づいています。
横山蜃樓顕彰俳句大会 作品募集_b0090852_09360263.jpg
横山蜃樓(よこやましんろう)= 明石の人。松瀬靑々門、倦鳥派の俳人。兵庫県神戸市で「漁火」創刊・主宰。昭和20年没。
 鵙の声屈する処無かりけり 蜃楼
事前投句は 2句1組、自由題。投句料なし、入賞賞品あり。豪華な選者陣。作品集の郵送を希望される方は、応募時に140円切手を同封してください。
横山蜃樓顕彰俳句大会 作品募集_b0090852_09490608.jpg
案内の詳細は「いぶき俳句会」サイトをご覧ください。同会代表のお一人 今井豊さんが中心になって、この企画をすすめておられます。
ちょっと探しにくいサイトですが、「目次」から「句会のお知らせ」ページを開いて、下へいくつかスクロールしていただくと、案内ページに辿り着けます。
 ここをクリックしていただいても移ります。 ➡ 「句会のお知らせ」ページ
所属等にかかわりなく、どなたでも、清新な作品をお寄せください。

# by tsukinami_819 | 2023-10-07 18:43 | その他 | Trackback | Comments(0)

田中裕明の百句(56)

 借問す虚子は初蝶見たりしや

 『先生から手紙』、平一〇、初蝶=春。
 借問とは、かるく問いかけるの意。虚子の代表句「初蝶来何色と問ふ黄と答ふ」は昭和二十一年春、虚子七十二歳の作。御大ときたらまるで敗戦直後の社会混乱など知らぬげに、主客二人の会話をそのまま句に仕立てた。

# by tsukinami_819 | 2023-10-07 06:43 | 百字鑑賞 | Trackback | Comments(0)