ふッつりと切つたる緣や石蕗の花 季語=石蕗の花(冬)。句集『ゆきげがは』所収、句集『草の丈』の「芝のころ(その一)」(昭和九年六月~一七年)所収。昭和一〇年作。 前書に「妻の初七日、妻の姉より申出あり、受諾」とある。最初の妻の京が結婚から十五年後に亡くなった。家庭を顧みない伴侶に苦しめられた果ての、悲しい自裁か。彼女はかつて万太郎が恋した芸者の妹だった。
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by tsukinami_819
| 2024-03-17 06:43
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みえてゐて瀧のきこえず秋の暮 季語=秋の暮(秋)、滝(夏)。句集『わかれじも』所収、句集『草の丈』の「芝のころ(その一)」(昭和九年六月~一七年)所収。昭和九年作。 前書「箱根にて」とある。遠く離れて滝音は聞こえず、あたりに霊の気配を感じた。昔の天下の険へ、避暑をかねて滝を見に行く人は多い。たとえば飛龍の滝などは遊歩道が整備され、紅葉の頃ハイキングに適している。
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by tsukinami_819
| 2024-03-16 06:43
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春の夜のすこしもつれし話かな 季語=春の夜(春)。句集『草の丈』の「芝のころ(その一)」(昭和九年六月~一七年)所収。 昭和十年十一月、愛人の出産時期が迫り、妻の京が睡眠薬自殺。その前後の家庭不和と関わりのある作品か。万太郎は当時の言葉でいう艶福家とおもわれ、男女間のもつれた話は多かった。春の夜の語に、不思議な色気。
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by tsukinami_819
| 2024-03-15 06:43
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角川「俳句」3月号に、現俳協会青年部長の黒岩徳将さんがインタビュアーをつとめた記事「川名大に聞く『昭和俳句史』」が掲載されています。 川名さんの発言がなかなか面白くて、いくつか引用したくなりました。 〉昭和六十年代から平成六年ぐらいにかけて、結社の時代となってきた。編集長も変わり、いわゆるシルバー世代がたくさん俳句の世界に入ってきたとき、その人たちを購買のターゲットにするということがあって、俳句の基本的な作り方マニュアルなどを必ず特集の一つに据えるという企画が定番化した。その流れは、季語の特集や切れ字・取り合わせの特集などという形で現在でも続いていると思います。 たしかに。 〉昭和五十年代までは、読者の方も新鋭俳人の犀利な評論文を読む読解力をかなり持っていました。でも結社の時代になると、読者も短い文章を好むということで、長めの難しい文章は読まれにくい。平成になってからはとくにそういう流れもあったと思います。 なるほど。ただし昭和の古い俳論を読むと、妙に長々しく、しかもかなり雑な(たとえば我田引水の如き)展開と言いまわしが多かったことも否定はできません。 〉私は、俳句本質論として、俳句は一句の中に「切れ」「余白」を設けて、その上下の二つのものが類比や対比などの関係で重層的な広がりや奥行きがある、詩的な世界が生まれる形式だと思っています。そういうことがないと、短いから散文に太刀打ちできない。 そうですね。この俳句本質論は、卓見だと思います。切れ・余白は、たしかに実作上の経験則と言えそうです。むろん平板な写生を重視する一物仕立ての句があったって、よいわけですが。 さらに、比喩のありかたについて。 〉直喩より暗喩の方が効果的で、その中でも部分的な暗喩と句全体が暗喩の場合がある。ある一部だけが暗喩という句もありますが、全体の暗喩と比べると、インパクトが弱くなるのではないでしょうか。暗喩は、重信のように「全体が暗喩でなかればいけない」という方がより効果的なのだと思います。 句全体が暗喩…いわゆる象徴なのかな。これは、ハードルが高いですね。
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by tsukinami_819
| 2024-03-14 18:43
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校長のかはるうはさや桐の花 季語=桐の花(夏)。俳誌「春泥」昭和五年六月号所載、句集『草の丈』の「日暮里のころ」(大正一二年一一月~昭和九年)所収。 噂として校長の人事が地元の人にまで聞こえてくるのは初等教育の学校だろうか。一人息子の耕一が九歳なので、珍しく家庭内の会話を拾った作品かもしれない。初夏の青空に映える大木の桐の花はおおらかで明るい。
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by tsukinami_819
| 2024-03-14 06:43
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