総合誌「俳句四季」2021年8月号拾い読み

東京四季「俳句四季」8月号の特集は、敗戦記念日のある月にふさわしく「戦争を詠むということ」です。
8名の方による1句鑑賞も興味深い読み物ですが、その前に置かれた3本の俳論、エッセイをたいへん面白く拝読しました。
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〇『戦争俳句なんて読みたくない』外山一機
だがそれは、ともすれば詠む者と読む者との馴れ合いをも引き寄せる。(略)見方を変えれば、その技術をうまく使いこなすことができれば-もっといえば、読み手の反応を逆算してしまえば、ある程度は反応を操作することができるということである。
戦争俳句を面白く読んでしまう危うさの裏に何があるのか? 外山さんの文章はなかなか屈折した文脈ながら、句作の難しさをおっしゃっているのかなと読みました。
〇『令和のいま、戦争を詠むとはどういうことか』樫本由貴
…(略)は戦争俳句を前線俳句と銃後俳句に分類し、今日まで戦争俳句を論じるための柱となっています。銃後俳句のうち、戦争映画などに取材して前線を詠んだ句は「戦火想望俳句」と呼ばれます。
樫本さんは新興俳句の戦争詠を解説したあと、現代の震災俳句との共通性を探ろうとしておられます。
〇『近代・機械・戦争ー戦火想望俳句とは何か』今泉康弘
このように三鬼は誓子の影響下に「機械の情緒」を追究していた。日中戦争開始後、その展開として「機関銃」連作を作った。
三鬼が戦火想望俳句を詠んだ理由として、今泉さんは「近代文明の本質への違和感ではないか(モダニズムは必ずしも近代文明礼賛なのではない)」とおっしゃっています。
以上、3本ともよく練られた面白い文章でした。でも、反戦については、特に掘り下げておられません。昭和どころか平成を越えて令和を迎えた現代において、戦争を論じることは困難なことなのでしょう。
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1句鑑賞で取り上げられている戦争関連句は、次の7句。
 大戦起るこの日のために獄をたまわる 橋本夢道
 友はみな征けりとおもふ懐手 高柳重信
 戦死せり三十二枚の歯をそろへ 藤木清子
 爛々と晝の星見え菌生え 高濱虚子
 夜濯ぎの水に涙ははばからず 文挾夫佐恵
 玉音を理解せし者前に出よ 渡邊白泉
 春暁の樹々焼けゆくよむしろ美し 桂信子
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なお、『ステイホーム期間中につき 写真で一句詠んでみました。』という平和な企画ページに、札幌郊外にあるモエレ沼公園を詠んだ、拙句が1つ掲載されています。
 モエレ山よりアイヌモシリの天の川 六四三
残念ながら、このような駄作! 行ったこともなければ、話に聞いたこともない土地を詠むためには、本物の俳筋力がないと駄目ですね。
次また機会があれば、もっと真剣に取り組まねばと、反省した次第。

by tsukinami_819 | 2021-07-21 18:43 | 読書感想 | Trackback | Comments(0)
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