東京四季出版「俳句四季」7月号、作品8句のページから。 『酒一壺』 国光六四三 跡継ぎの手入れおほきな松の花 捨畑の隅に樒の花盛ん ひと恋ふるあやふさ源平桃の花 衰へし椿落つるも落ちざるも 薬缶おく三畳敷の花筵 酒一壺我が身にまとふ花の影 テーブルの傷なぞりゐる花疲れ 夜桜の篝の消えて鬼の闇 いずれも春の花の句。 愚の骨頂、蛇足であることを承知の上で、ブログらしく饒舌に、自句解らしきものを書いてみます。 松の花は雌雄同株。古くは百年に一度しか咲かないと考えられ、そんな花が今年も咲いているというので、長寿を祝う歌に詠まれたとか。 第2句- 樒の花は仏花用。かたまって咲く黄白の花は意外なほど可憐で妖しい。村内に空き家、廃屋が増えて、放棄田や捨て畑も珍しくなくなった。 第3句- 神戸の生田神社で、源平桃の花を見かけた。不思議なことに一本の木に紅白の花が混ざり合って咲く。その前で、男女が写真を撮っていた。 第4句- 椿の花ははらはら散らず、全体がまとまって落ちる。山頭火も「笠へぽつとり椿だつた」と詠んだ。ところが、枯れたまま落ちない花もある。 第5句- 京都の夕べ。小川の上に個人が設えたらしい小さな川床(ゆか)で、花見の準備が進んでいた。デンッと薬缶だけが先に置いてあった。 第6句- 唐の李白に「月下独酌」と題する五言古詩がある。独りで酒壺を抱えて花見をしていたら、月と影と自分とで三人になったと詠う。 第7句- 京都の百万遍、京大北門前に「進々堂」という老舗の喫茶店がある。店内には作業台みたいな大きな木製のテーブルが置かれている。 第8句- じつは原句をつくったとき「花篝」という便利な季語のあることを忘れていた。下五にあれこれ言葉を措いてみて、やっと「鬼の闇」を得た。
by tsukinami_819
| 2019-06-25 06:43
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