発想と表現

毎朝、紅茶はリプトンの三角錐の形をしたティーバッグを愛用しています。このバッグ1個で、カップ2杯分の紅茶をとることができます。家人不在で、わたしひとり家に籠っている日には、1個をカップ4杯目まで使いつづけます。吝嗇、ケチといわれたら、たしかにそう。胃腸が弱くて日になんどもお茶を飲むものですから、重宝しています。でも、さすがに5杯目となると、いけません。うすく色のついた、ただのお湯。
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さて、俳句づくりの話。
俳句の実作に必要なものは発想と表現ではないか、と考えています。
長文をあやつる小説なんかだと、発想(アイデア)よりも、構想(プロット)のほうが大事でしょう。構想を練る過程で、当初発想したテーマが吹きとんでしまうことだってあるでしょう。でも俳句の場合は、発想が勝負です。スタートダッシュをまちがえたら、置いてきぼりを食らってしまいます。なにを感じたのか、おもったのか。なにを描きたいのか。
たとえば「秋の風」というお題をもらったら、なにを発想しますか。ただなんとなく、公園の草花が風にゆれている景色を思い浮かべただけでは、俳句になりません。「秋の風」から死者のことを思い出したり、上司から叱られた失敗を恨んだり、若い頃のデートを懐かしんだりして、それから、言葉をさがしはじめましょう。ときには、それが〈公園の草花が風にゆれている景色〉とマッチすることだってあるでしょう。
実作の第2段階は、表現です。第1段階で発想した心情、感覚をどうやって言葉にすればよいか。どんな物を、どんな言いまわしであらわせば、うまく「秋の風」を表現できるでしょうか。
つよい名詞をえて、ひとまず17文字をととのえたら、語順を入れかえたり、助詞を置き換えたり、動詞の代わりに形容詞を使ってみたりしながら、実感を表現しなければなりません。詩句は磨かなければ、原石(発想)のままで終わってしまいます。先にあげた例でいうと、死者や叱責のようなナマの言葉を用いるかどうかの判断はケース・バイ・ケースですが、たいていの場合、表に出さないほうが成功するでしょう。
過去の著名な俳人の句業をふり返るとき、よく「処女句集の出来がもっともよい」あるいは「第1句集にこそ俳人の特質が現れている」と評されることがあります。これはつまり、実作第1段階における発想が、若年のときほど優れていたことを意味します。年齢をかさねると、発想力は低下します。
一方、実作第2段階に必要な表現は、年齢を重ねるほどに磨かれてきます。うまいなあ、とつぶやきたくなるような句を詠めるようになります。ベテランの俳句は、発想は陳腐でも、なめらかな表現になるようです。いわば5杯目の紅茶。むろん、あくまで一般的傾向ですが。
清新な発想と磨かれた表現・・・俳句実作上、大切な車の両輪です。

by tsukinami_819 | 2018-10-17 06:43 | | Trackback | Comments(2)
Commented by mariko789 at 2018-10-19 21:05
>清新な発想と磨かれた表現

それができれば苦労はないですよねぇ~
私も発想の新鮮さが磨耗して何年も経つ気がします。
俳句を始めて2~3年目の句が今よりずっと良かったような。

月刊「俳句」の投句ですが、題詠は時間的に無理でしたが、雑詠は参加しようと思います。
タイから東京は10日間かかるそうで、明日出さなければ間に合わない。
というか郵便の遅れ・事故が多く、無事に届く保証はないのですよねぇ~
先月も雑詠のみですが25日に出しましたが、間に合わなかったと思います。
やっぱり海外からは無理かなぁと思わないでもなく。。
付録の葉書がついてると、つい出したくなるのは貧乏性かしら。
六四三さんは、毎月投句している雑誌ってありますか?
沢山句を作っていらして、、月に何句くらい作りますか?
Commented by tsukinami_819 at 2018-10-20 07:43
〉marikoさん
投句先は、総合俳誌の月刊2と季刊1誌、結社誌の隔月刊2と季刊1誌、新聞1紙、月例句会2つ、いまはそんなところ。
投句の数は月に30句前後で、以前は50句ほどでした。作句の数は、書き留めたとたん馬鹿馬鹿しくなって捨てるのがほとんどなので、何句だかわかりません。使える季語が増えるようにと思い、できるだけ兼題の句も詠むようにしています。

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