認知症と俳句

中島京子著『長いお別れ』を読みました。本の帯に「映画化決定!」とあったので、書店でなんとなく手にした小説です。タイトルから想像できるかもしれませんが、認知症になった老人とその家族(妻と3人の娘と孫たち)の物語です。メルヘンの要素は、ほとんどありません。介護の厳しい現実がリアルに描かれています。
川本三郎氏が「認知症が社会問題になったのは有吉佐和子の『恍惚の人』がベストセラーになった一九七二年頃からだろう。」と解説に書いておられたので、そういえば、この『長いお別れ』は、現代版『恍惚の人』かもしれないと納得しました。
わたしの父が製鉄所の工員を定年退職するとき、何を思ったか、当時よく売れて社会現象にもなっていた話題の小説『恍惚の人』を買ってきました。読書習慣のない人だったので、たいそう驚いたことを覚えています。そうして、父が読了したと思われる頃、電話台の下に仕舞われていたその本を取り出して、認知症(当時は痴呆症といったかもしれません)の実情を知ったのでした。
あれから、母を施設に入れたし、親戚の高齢者たちの認知症の様子をたくさん見聞きしてきました。
さいきん、上五を「認知症」とする俳句を詠んでみました。その句が俳句としてきちんと成立しているのかどうか、よくわかりません。ただ現実生活を前にして、俳句って、なんと脆弱な文芸だろうかとおもいました。
小説『長いお別れ』の主人公は元中学校長で、中村草田男の俳句のファン、退職後は句会へ出かけている人物という、そんな設定でした。
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あっという間にあらわれた、彼岸花。
by tsukinami_819 | 2018-09-17 06:43 | 読書感想 | Trackback | Comments(0)
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